金久保前部会長の後を引き継ぎ、8代目の基礎物性部会長を仰せつかりました。設立15年を迎える部会の伝統に身の引き締まる思いです。部会役員の皆様にご協力いただきながら、部会のために尽力させていただく所存ですので、宜しくお願い申し上げます。
部会長となり最初の仕事は部会役員の選定と部会の継続申請でした。幸いにも本年6月に部会の継続申請が認められ、今後も基礎物性部会として活動していくことになりました。継続申請にあたり、前回の継続審査(2011年)以降の自己評価書を作成しました。部会Webサイトに自己評価書を公開しておりますので、部会の活動状況に関してはご参照ください。
部会継続の機会に簡単に部会の歴史に関して触れたいと存じます。化学工学協会(現化学工学会)では、1958年に物性定数委員会を設立し、その後化学工学会物性定数調査委員会として合計44年間にわたり基礎物性に関する活動を続けてきました。その後、化学工学会の部会制導入に伴い2003年4月に化学工学会に基礎物性部会が設立され現在に至っております。部会としての歴史は15年余りですが、その前身からは60年も継続していることになります。
従来は、基礎物性に関するデータベースの構築が主な活動でしたが、最近では部会活動の軸足を秋季大会シンポジウムや国際会議の開催と支援、また物性に関係した講演会・講習会の開催へと移してきました。幸いにも歴代の部会長のご尽力により、秋季大会での部会シンポジウムは近年堅調を保ち、当部会のメンバーが中心となって開催してきた国際会議("International Symposium on Molecular Thermodynamics and Molecular Simulation"(MTMS),1994年以来3年毎に開催)も8回を数えるまでになりました。
今後の部会の活動に関しては、従来の方針を踏襲し物性に関する研究者や技術者の情報交換、国際交流、研究発表の場の提供を通して、物性研究やその技術開発の促進を目指します。特に次年度はAPCChE(18th Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering Congress)が札幌で開催され、部会シンポジウムとして"Physical Properties and Physical Chemistry"と、部会横断シンポジウムとして"Carbon Capture, Utilization, and Storage (CCUS): Process Development and Fundamental Properties"を開催します。部会員の皆様の積極的な参加をお願いします。また、上述しましたMTMSに関しては2021年に仙台での開催を予定しており、金久保前部会長と小職が協力して準備を進めていきます。MTMSへの皆様の多数のご参加をお待ちしております。
化学プロセスの設計と最適化に要求される物性値情報やその高精度化は、今後も継続する必要があると考えており、これらの物性値測定技術や推算法開発、これらに関連した人材育成に部会としても継続的に取り組んでいきます。また近年では、超臨界流体、イオン液体、深共融溶媒などの新しいグリーン溶媒やナノフルイドなど、対象とする物質群の範囲や温度・圧力等の条件が著しく拡大し、学術および技術的な進歩や求められる精度の向上が強く望まれ、アカデミックな分野に留まらず、産業分野からも発展が期待されていると考えており、部会としてもこのような分野に積極的に取り組む所存です。このためには、さまざまな専門分野の人材を幅広く取り入れ多面的な評価法を試みていくことが肝要と考えており、部会に新たな人材を取り込めるよう魅力の向上に努めていかなくてはなりません。皆様のご協力をお願いします。
最後に部会員の情報交換および懇親を深めるため、化学工学会の年会・秋季大会において部会集会および懇親会を開催しています。物性に興味のある方、その測定法や計算法を勉強したい方、具体的に物性を測定したい方、あるいは、物性の研究成果を発表したい方は、本部会への参加をご検討いただければ幸いです。多数の皆様のご入会をお待ちしています。